2010年7月アーカイブ

◆アイロンの形
 アイロンの底の形は世界共通です。アールの付いた三角形をしています。先端が尖っているのは、細かい部分を仕上げやすくするためと、滑らせやすくするためです。二辺のアールは、衣服のエッジ部分の仕上げ機能的にすることと、デザイン的な面からです。
アイロンは、先端が鋭角的なものがお勧めです。

◆アイロンの重さ
 アイロンは重いほど本格的、仕上がりが良いと思われています。実は重いアイロンでは能率は上がりません。アイロンは衣服にあった熱量、水分、重量の総合作用です。重いアイロンと軽いアイロンを使い比べると、軽いアイロンの方が使いやすく、アタリも出ないなど良い面がたくさんあります。
 

◆アイロンの種類
 スチームアイロンとドライアイロンがあります。一般にはスチームアイロンで共用していますが、出刃包丁で刺し身を切るようなもので、無理があります。できれば揃えたいものです。
スチームアイロンは、スチームがパワフルなものがお勧めです。

◆アイロンのスチーム孔
 アイロンのスチーム孔は、2種類あります。一つは、底面全体にスチーム孔が開けられたものです。スチームが底面全体から出ます。もう一つは、先端三分の一にスチーム孔が開けられ、残りの三分の二にはありません。先端のスチームで衣服にスチームを行き渡らせ、残り部分で湿気を乾燥させながら仕上げるためです。
アイロンは、先端三分の一にスチーム孔の開いたものがお勧めです。

 クールダウンは刃物の焼き入れと同様、乾熱アイロン後の衣服から瞬時に熱気を取り払い、しっかり固定するテクニックです。
家庭でのアイロン掛けが上手にできないのは、このテクニックが欠けているからです。
このクールダウンは単に冷ませば良いのではなく、いかに早く冷ますかです。部分を掛け終る毎に、上下に7~8センチ振って余熱を冷まし、次の動作に移ります。夏は、扇風機を使うという方法もあります。部分を掛け終る毎に、扇風機で冷まします。フーッと息を吹きかけるだけでも効果があります。
クールダウンは、素早さが勝負です。

 アイロンの熱源には、スチームによるものとアイロンソール(底)からのものがあります。アイロンソール(底)からの熱を、スチームからの熱と区別して乾熱と言います。
 この乾熱は、アイロン仕上げに大きな役割を果たします。乾熱は、衣服に残ったスチームの湿気を飛ばします。
 アイロンを掛けて時間が経つと型崩れが起こるのは、スチームの湿気が衣服に残っているからです。
 ズボンの折り目が長持ちしないのは、スチームの湿気が残っているからです。
 アイロン効果を長持ちさせるコツは、スチーム質をドライにすること、乾熱アイロンで完全に乾燥させることです。
乾熱による乾燥が、アイロン仕上げの決め手です。

 綿や麻など植物性繊維で作られた衣服は、体重を乗せてアイロンを掛けるという常識があります。本当でしょうか。柔らかいアイロン台を使えば、軽いアイロンで力まず楽に、アタリもなしに掛けられます。
 毛や絹など動物性繊維のデリケートな素材でできた衣服は、アイロンソール(底)を直接触れさせてスチームを当てたり、押さえたりすると、アタリやテカリが付きます。風合いも変わります。
 浮かせアイロンというテクニックがあります。
 浮かせアイロンとは、衣服からアイロンを少し離して掛ける方法です。浮かせるといっても何センチ離すのではなく、アイロンを心持ち持ち上げ気味、アイロンと衣服の間にティッシュを半分に分けたものを1枚挟んだ程度の感覚です。
 この当たるか当らないかの微妙な感覚が大事です。浮かせアイロンは、衣服にアタリやテカリを付けません。風合いを損なうこともありません。
 

◆スチームの質を選ぶ
 スチームの役割は、湿気と熱を素早く衣服に与えて成形しやすい状態にすることです。スチームの量を多くするよりも、スチームの質をドライにします。
 スチームの質をドライにとは、水分の少ないスチームにするという意味です。アイロンは、スチーム性能の良否が仕上がりを左右します。
 ところで、いま使っているスチームアイロンのスチーム質をドライにする方法があります。綿100%の当て布1枚で、スチーム質をドライにすることができます。
 本来当て布は、アイロンソール(底)の温度を下げるためと、テカリを防ぐために使いますが、綿100%の当て布がスチームの水分を吸収して、スチーム質がドライに変わります。
当て布は、日本手拭いが大きさ、熱さ、使いやすさで最も適しています。タオルでは代替できません。

 

 湿気はもちろんのこと、30度の余熱が衣服に残っていても、シワや型崩れの原因になります。Yシャツのアイロンがけでよくおこることですが、かけ終わってすぐに動かすとシワができます。余熱が原因です。

 仕上げにスチームアイロンでスチームをかける方がいますが、かけすぎると衣服に残った湿気でアイロン前の状態に戻ってしまいます。ダラーッとなります。
 ズボンの折り目がすぐに消えてしまうのも、スチームの湿気が残っているからです。乾熱アイロン(スチームを止めた状態)で湿気を飛ばし、クールダウンをします。

 アイロンにはいくつかの基本テクニックがあります。覚えてしまえばYシャツ、背広上下、セーター、絹のネクタイやブラウスも難なくこなせます。縮んだ衣服を元の寸法に戻す、風合いを蘇らせる、ツヤを回復させることも可能です。
 弘法は筆を選ばずといいますが、使いづらいアイロンやアイロン台ではベテランでも良い結果が出ません。軽くて蒸気の強いスチームアイロン、軽くて先のとがったドライアイロン、広くて柔らかいアイロン台、この三つは揃えたいものです。
 アイロン台はYシャツが広げられるゆったりサイズで蒸気や熱気が下に抜けやすいものがお勧めです。クッション性も大事です。余計な力がかからず疲れません。
 これらの条件を満たしたアイロン台が、簡単に手作りできます。ウールの毛布を四つに折り、綿の布でくるめばでき上がりです。
 自宅でクリーニング本舗では達人のぱりっとアイロン台をお勧めしています。
 他に、日本手拭い、手直し用アイロン手袋、袖棒、霧吹きなどを準備します。

 ドライクリーニングは、溶剤を使って洗濯物を濡らさずに洗います。それで、「ドライ」クリーニングと呼ばれます。水の代わりに塩素系か石油系の溶剤に少量のドライ洗剤を加え、溶剤を循環してフィルターで汚れやほこりを濾しながら洗います。専用のマシーンが必要で、専門店でなければできません。
 ドライクリーニングは、衣類を傷めない優れた洗濯法ですが、一番の欠点は水溶性の汚れが落ちないことです。化学雑巾でホコリは取れても、汚れは水拭きしないと取れないのと同じです。
 一方、ウェットクリーニングという水洗い法があります。汚れはよく落ちるのですが、衣類へのダメージが大きいのが欠点です。
 自宅でクリーニング本舗がお勧めする【洗濯システム】は、水の分子を大きくする溶剤を配合し、衣類の濡れを抑えて洗う、洗濯法です。≪水ドライ法≫と呼ばれ、ドライクリーニングでは落ちない汚れやシミが確実に取れます。

“ドライクリーニングが家庭でできる”ということではなく、“ドライクリーニングに勝る、水のパワーを活かした、ホームドライクリーニングができる”ということです。

 水で洗うと縮むことがあります。ぬるま湯でも縮むことがあります。ドライクリーニングでも縮むことがあります。

 洗濯で衣類が縮む原因は、
①洗濯時の圧力(押す・揉む・叩く・ねじる)による縮み。
②洗濯時の温度変化(湯で洗って水ですすぐ・熱乾燥する)による縮み。
③洗剤の成分(アルカリ・弱アルカリ)による縮み。
④洗濯物の繊維や製品(素材・縫製・加工)そのものが原因の縮み。

①②③は、洗濯方法と洗剤を選ぶことで解決します。④は選択の問題で、洗濯の問題ではありません。

 衣類の伸びや縮み、すなわち型崩れは熱乾燥のほか、洗濯時の押す・揉む・叩く・ねじる・脱水などの摩擦によって起こります。濡れた状態で物理的な力を加えることで起こります。
 型崩れは、ドライ洗剤か中性洗剤をつかい、、つけ置き洗いをするか、洗濯機を使うときは厚手の洗濯ネットまたは洗濯ネットを二枚重ねで使えば避けられます。

 ウールは羊毛、その他を獣毛繊維製品と言います。アンゴラはアンゴラという種類のウサギ、モヘアはアンゴラヤギ、カシミヤもヤギの毛です。
 ウールに代表される動物性繊維は、「スケール」といううろこ状の表面、「非結晶部分」という水にぬれるとダメージを受けやすいところがあります。特に、お湯の中で押したり揉んだりすると「スケール」が絡み合ってフェルト化したり、「非結晶部分」が変化するなどの影響を受けます。
①洗いにもすすぎにも水を使う。
②押したり揉んだりしない
③風合回復剤ドライの素Dを併用する。
 動物性繊維の絹も、植物性繊維の麻も同じです。ふっくら洗えて、今までの洗えないという思い込みがウソのようです。

 洗えないものもあります。
・レーヨンなど水に弱い繊維で作ったアウターウェア。
・外国製の衣服、装飾品および染色堅牢度の低い衣服。
・革製品および毛皮を装飾に使った衣服。
・正絹の着物および着物関連の小物類。
・特殊加工(プリーツ、エンボス、コーティング)した衣服。
・毛や絹などの強撚糸加工の生地(ジョーセット、クレープ、ちりめん)でできた衣服。
 最近のものは改良が進んでいますが、レーヨン(ビスコース)及びレーヨン混紡の衣服は縮みます。
 アイロンで修復できますが、初洗いは専門店のご利用をお勧めします。

 すすぎ過ぎは衣服を傷めます。
 ドライの素Sはすすぎやすい原料を厳選しています。脱水の後、きれいな水の中で洗濯物の表面の汚れを流す程度、一回すすぎで十分です。洗剤成分は衣服に残りません。

 「前処理」で、水溶性、油溶性、不溶性の汚れやシミをほとんど落とすことができます。
 落ちない汚れやシミもあります。
・サビ、カビ、墨汁、毛染め液でできたもの。
・アイロンで熱処理をしたもの。
・日光で黄変したものや、黄褐色に変色したもの。
・パーマ液、整髪料、香水などの化学変化でできたもの。
 これらが原因の汚れやシミは、特別な技術を用いなければ取れません。
 シミ抜きの上手なクリーニング店、特に着物のシミ抜きが自店でできるところに頼むときれいに、生地を傷めずに処理してくれます。

 ドライクリーニングに使用する溶剤は、一言でいえば石油です。
ドライクリーニングは、塩素系や石油系の溶剤の中で衣服を濡らさず洗うため、風合いや形の変化が起こりにくく、優れた洗浄法です。塩素系の溶剤は、不燃性で、しかも油溶性の汚れやシミをよく落としますが、毒性が懸念されています。石油系の溶剤は衣服に優しいのですが、引火性のため乾燥が難しく、乾燥が充分でないものを着用すると皮膚火傷を起こしたり、石油臭が残ったりします。
 いずれの洗剤も管理が不十分だと洗浄中に再汚染が起こり、白物やピンクの衣服は薄汚れた感じになることがあります。
 自宅でクリーニング本舗のお勧めするドライの素Sの洗剤成分は、人体に優しい化粧品原料と天然由来成分100%、 選び抜いた原料で作りましたので、安心してお使いいただけます。
    ・ヤシ油由来、米ヌカ由来・オレンジ由来の・・・洗浄効果
    ・柿由来(カキタンニン)・・・消臭効果
   
・パーム核油由来・・・抗菌効果
    ・パパイヤ由来(パパイン酵素)・・・皮脂除去効果
    ・絹由来(加水分解シルク)・・・風合い保護効果

 新聞やテレビで地球温暖化の情報を見ぬ日はありません。温暖化の原因は、化石燃料から排出される二酸化炭素です。極地の氷が解け、シロクマはもとより人類の生存までもが危機に瀕していると伝えています。
市民生活でも意識が高まり、暮らしを見つめなおす動きが広がっています。
 天然由来成分から作られたドライの素Sは安全面、環境保全面にも十分な配慮をしています。ドライの素Sは人に衣服に優しいだけでなく、環境に優しいクリーニング洗剤です。

 最近、電機メーカーでは、乾燥機での縮みを防ぐ方法として、完全に乾燥する前、少し湿り気が残っている段階で取り出し、自然乾燥をさせるとよいと言っています。乾燥機をうまく活用することは良いのですが、簡便な方法とはいえません。
 洗濯時の縮みの大きな原因が温度変化にあるのですから、洗いからすすぎまで常温の水、乾燥は自然温度で行ってください。夢の乾燥機の出現まで、自然乾燥に勝る乾燥法はありません。

 ドライマークの絵表示は、意外と誤解されています。
 ドライマーク衣服は「ドライクリーニングができる」ということで、「ドライクリーニングを必ずしなければいけない」ということではありません。
 ドライマーク衣服も、ドライ洗剤+適切な洗い方で、ほとんど自分で洗えます。自分で洗うと風合いが悪くなる、形が崩れる、アイロンが面倒などと心配が尽きませんが、古いセーターやジャケットで挑戦してみてください。体験すれば、自信が湧いてきます。

 レーヨンは、木材パルプを主原料にした再生繊維です。綿や麻と同じようにセルロース、つまり木材パルプが原料の植物繊維素からできているので、天然繊維とよく似た性質を持っています。
 ◆レーヨンの特性
  ①吸湿性・放湿性が化学繊維の中で最も高く、綿よりも優れています。
  ②独特の光沢があり、ドレープ性にも優れています。
  ③染色性が良く、いろいろな染料を使うことができ、深みのある色相が表現できます。
  ④他の染料と良く馴染み、混紡、交織、交編などに最適です。
  ⑤熱で軟化、溶融することがなく、高温に耐えられます。
 ◆レーヨンのウィークポイント
  ①綿や絹ほどの強度がなく、水に弱く、濡れた時の強度は乾いている時の50から60%にもダウンします。
  ②摩擦に弱く弾性に乏しいのでハリやコシがなく、洗濯によりシワになりやすい。
  ③繊維の中で最も汚れやすい。
 最近はこれらの欠点を改良したものも作られていますが、家庭での洗濯が難しい繊維の一つです。

 ダウンウェアに使われる羽毛は、水鳥の羽が主に使われています。キルティングの中に入れるこれらの羽毛は、洗剤や水で何度も洗浄したものです。
 話は少し古いのですが、湾岸戦争時、流れ出た重油でべとべとになった水鳥をニュースで見ました。救出作戦で、羽根の汚れを落としたのは洗剤と水です。
 羽毛は、洗剤と水に耐えられる素材です。ドライクリーニングに出すと高額ですが、これは洗濯技術ではなく、かさ高いからです。

 残念ながら、毛皮・皮革で作られた衣服は家庭では洗えません。専門店へ依頼してください。
 理由は、
  ①毛皮は、パウダークリーニングをしています。パウダークリーニングは、設備と技術が必要です。
     ②毛皮も皮革も、水洗いをすると皮の部分が硬くなります。皮革は、表皮にヒビ割れが起こります。
  ③皮革は、水につけると脱色します。元の色に戻すには、色を合わせてスプレー染色します。
 軽い汚れは、専用クリーナーで拭き取ります。
 なお、敷物用のムートンはきれいに洗うことができます。

 絹は、繊維の女王の名にふさわしく、美しい光沢としなやかな肌触りで古代から人々を魅了してきました。絹の組成は「セシリン(硬タンパク質)」と「フィブロイン(繊維素)」で、全体の95%を占めています。セシリンは、お湯やアルカリで柔らかく膨らみ溶けます。セシリンを取り除くと、滑らかで美しい光沢のあるフィブロインが現れます。このフィブロインが絹の本体です。フィブロインは、お湯や洗剤には溶けません。
 絹は、天然繊維の中で最も細い繊維です。この細さが繊細なしなやかさになり、エレガントなドレープ性を持たせます。生糸に細かいうねりがあるので、豊かで、深みのある表情が出るとともに、軽く、暖かさが備わります。コシのある織物にもできるのは、天然繊維の中では麻に次いで弾性があるからです。
 染色性にも優れていて、カラーバリエーションが楽しめます。
 ◆絹のウィークポイント
  ①撥水性がなく汚れやすい。
  ②日光でもろくなりやすい。
  ③虫に弱い
 確かに、水洗いをするとツヤが無くなりますが、「風合回復仕上げ」をすれば、回復はできます。

・洗濯の前後に、高級黄変除去剤イエローカットを繰り返し噴霧してください。
・毛や絹、ポリエステルなどの素材を選ばず使えます。
・洗濯後なら、一度の噴霧で取れなければ、乾燥するのを待って繰り返し噴霧してください。
・洗濯後なら、すすがずそのまま乾燥させても大丈夫です。
・経時変化で黄褐色になったシミにも有効です。
・色柄物のブラウスにも安心して使えます。

脱いだら直ぐに洗うことです。汗ジミになりません

 油溶性のシミは、ボールペン・朱肉・ファンデーション・口紅・自転車の油・自動車のオイル・靴墨・マジックインキなどです。油溶性のシミの中で最も厄介なのは、天ぷらなどの揚げ物や料理で加熱した食用油が付いたものです。食用油は衣服に付いてもいつまでもネバネバしていますが、加熱により質が変化した食用油は、熱いものにも冷めたものにも付くと1日ぐらいで乾きます。これを乾性油のシミといいます。
 油溶性のシミはドライクリーニングで取れますが、乾油性のシミは、ドライクリーニングでも取れません特殊な処理が必要です。
 シミの状態は、油溶性も乾性油も輪郭がぼやけて中は均一で、灰色または黄褐色をしています。

 水溶性のシミは、飲食物の食べこぼしなどが主なもので、シミの大部分を占めています。ジュース・コーヒー・酒類・みそ汁・スープ・果汁などです。シミの状態は、ほとんどが輪郭がハッキリしています。血液・インクなども含まれます。
 水溶性のシミは取りやすそうに思えますが、食品の中に含まれる糖や糖質(澱粉)・塩類は、アルカリや熱、経時変化(日数が経つこと、通常1週間以上)でキャラメル化し、黄色や褐色のシミになります。蛋白質が含まれたシミは、アルカリや熱により硬化します。尿も、経時変化で黄色いシミに変わります。
 これらは、水や洗剤では落とすことのできない不溶性のシミです。

 泥ジミの中の砂・ホコリ・サビ・カビ・タバコのヤニなどです。蛋白質の固着したもの、糖などの経時変化したもの。墨汁も不溶性のシミです。
 蛋白質のシミは、明るい方に透かして見ると輪郭が透き通って見えます。

 

 シミは取れたけれども、生地を傷めてしまった。
 シミは取れたけれども、色が抜けてしまった。
 シミは取れたけれども、白くなってしまった。
 シミは取れたけれども、毛羽立ってしまった。 
 シミも取れたず、衣服も傷めてしまった。
 シミ抜きは、繊維や染色、シミを見分け、適切なやり方を選んで行います。シミ抜きは、焦らず、傷口を手当するように優しい気持ちで行いましょう。

 油の混ざったシミ、油の下にあるシミは、油が防水の働きをして水や洗剤、化学薬品を通しません。シミ抜きの第一歩は、油性分を取り除くことから始まります。簡単に取る方法があります。「指抜き」です。驚くほど簡単に取れます。通常の方法では取れない、クリーニングに出しても残る、数カ月もしてから浮き出てくる厄介な乾油性のシミも取れます。
 なぜ簡単に取れるのか、理由は簡単です。経時変化や熱で硬化し、殻状になって防水の役目を果たしている表面を砕いて、洗剤原液が浸透しやすくなるからです。

 シミの部分に真っ先に水を付ける方がいますが、繊維によっては膨張し、汚れや染料が中に入り込んで取れにくくします。
 シミ抜きには、方程式があります。まずは油溶性のシミ、次に水溶性、後は酵素処理、溶解処理、化学処理、漂白処理と続きます。
 水溶性の処理の後は、シミの状態に応じて必要な処理だけをすればよいのですが、油溶性と水溶性の処理は必ず順序どおりに行います。
 シミによっては水溶性のものと断定できるものもありますが、多くはありません。判定しにくいシミを取るには、油溶性と水溶性のシミを一体として行う方が安全で確実です。

 輪ジミを残さずシミを取るには、繊維、染色、シミの知識、技術と経験が必要です。小道具も必要です。
手軽な方法として、洗濯を前提としたシミ抜きをお勧めします。シミ抜き処理の後、全体洗いをすれば輪ジミは残りません。
クリーニングの基本で紹介している「前処理」をシミ抜き法として行えば、特別な道具や化学薬品は不要です。日常の生活で付く汚れやシミのほとんどが取れます。
この「前処理」は、油溶性と水溶性のシミ抜きを一体化したもので、不溶性のシミでも一部、取り除くことができます。クリーニング屋さんでも取れなかったシミが、この「前処理」で取れることもあります。

洗濯の前処理

 シミといえば反射的に漂白剤という方がいますが、漂白剤で取れるシミはそう多くはありません。シミ抜きの順序としては、漂白剤は最終手段です。
 漂白剤の原液を使うと色が抜けたり、ムラになったりします。本来は、白いものをより白くするためのものです。染み抜き剤としては用途は限定されます。最近は色物、柄物に使えるソフト仕様のものも出ていますが、使う前に目立たないところにつけ、アイロンをかけてテストをします。繊維や染色に変化がないことを確かめてから、シミ抜きをしてください。

 シミは、付いてからの時間が問題です。2時間以内だと非常に取りやすく、2日以内だと取りやすく、1週間ではまあまあ取りやすく、それを超えると急に取れにくくなります。時々刻々、取れにくくなります。2週間を超えるとシミの質も変わり、定着してしまいます。熱やアルカリで変化したものはさらに取りにくくなります。糖はキャラメル化し、蛋白質は硬化して不溶性のシミに変化してしまいます。
 汗も、食べた物や体質で成分が異なり、短時間で変化して取りにくいシミになることがあります。
 昔から、脱いだら体温が残っているうちに洗えと言われています。

順序を入れ替えるとシミは取りにくくなります。

①油性処理
   シミによって中性洗剤の原液、酢酸アミール※1、モノクロールベンゼン※2を使い分ける。
   酢酸アミールはアセテート、トリアセテートには使えない。

②水性処理
  水のみで処理するか、水と中性洗剤またはマルセル石鹸を使う。

③酵素処理
  蛋白質分解用酵素を使って、水と温度(40~50℃)と時間をかける。
  (アイスクリーム・チョコレート・洋菓子・卵の白身・ミルク・マヨネーズ・カレー・ミートソース・肉汁・血液・
  嘔吐物・ 精液・墨汁など。)

④溶解処理
  アルコールやアルカリ、アンモニアで染料を溶出する。
  (ラッカー・ボールペン・マジック・マニキュア・インキ・染料など。)

⑤化学処理
  科学的にシミを取る方法で、シミにより使用する薬品が異なる。
  (汗・油・サビ・カビ・焼け焦げ・セメントのなど。)

⑥漂白処理
  酸化漂白または還元漂白を行う。
  酸化漂白には、過酸化水素水、オキシドールまたは市販の酸素系漂白剤を使う。
  (紅茶・コーヒー・草の汁・汁粉・前財・スープ・マジックなど)
  ただし、次のものは過硼化ソーダー※3で酸化漂白を行うと効果的。
  (コカコーラ・サイダー・香水・インキ青・血液・排泄物など。)
  還元漂白にはハイドロサルファイト※4を使う。
  (ジュース・ラー油など。)
  塩素漂白は衣服用にはあまり使わない。

※1酢酸アミール・・・樹脂・接着剤・鉱物油・塗料・マニキュア・化学糊の硬化したものに有効。
※2モノクロールベンゼン・・・各繊維に安全な油溶性シミ抜きの基本溶剤。界面活性剤と混ぜて使う。
※3過硼化ソーダー・・・過酸化水素を原料に作られる。酸化黄変したシミに効果的。
※4ハイドロサルファイト・・・マルセル石鹸と併用し、高温での煮洗いで塩基性染料以外は脱色できる。人工藍色インジコには使えない。
 

 溢れるようにあるシミ染み抜き剤の中から適切なものを選ぶのは難しく、使ってもあまりうまくとれない場合が多いようです。クリーニング店に頼んでもきれいに取れなかったという相談も結構あります。
 自宅でクリーニング本舗ではシミ抜きを特別なものと考えず、洗濯前の習慣として行うことをお勧めしています。
 自宅でクリーニング本舗で紹介している「前処理」は、ほとんどのシミを取ることができますが、万一取れrなくても繊維への負担が少なくてすみます。
 一部のサビやカビ、墨汁には化学処理を要しますが、最も多い薄い黄褐色のシミが残った時は、消毒用オキシドール※5を薄めた液を使えばほとんどが取れます。
 シミ抜きで大切なことは、生地を傷めないこと、次に打つ手の可能性を残しておくことです。

◆オキシドールの使い方
①デリケートな生地には、水で7倍以上に薄める。
②色物、柄物にはテストをする。目立たないところにつけ、アイロンをかけて変色しないことを確かめる。
③オキシドールは竹串か楊枝の先に付け、シミの真ん中に移す。これを繰り返してシミ全体に広げる。
④一度で取れないときは、2~3度繰り返す。
⑤水でよくすすいでから陰干しする。

※5消毒用オキシドール・・・過酸化水素を10倍希釈したもの。

※1~5はすべて薬局で入手できますが、記名捺印の必要なものもあります。

 気を使っていてもシミは付きます。着用のたびに汚れやシミが付くのは防ぎようがありません。
 お勧めしたいのは、予め汚れやシミが付きにくい加工をしておくことです。加工と言っても、たいそうなことではありません。「風合い回復仕上げ」をしておきます。風合回復剤ドライの素Dと活性仕上剤ドライの素Eが繊維の一本一本を程よくコーティング、汚れやシミを付きにくくします。付いた汚れやシミも落としやすくなります。

ドライの素Dドライの素E

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