シミ抜き

 油溶性のシミは、ボールペン・朱肉・ファンデーション・口紅・自転車の油・自動車のオイル・靴墨・マジックインキなどです。油溶性のシミの中で最も厄介なのは、天ぷらなどの揚げ物や料理で加熱した食用油が付いたものです。食用油は衣服に付いてもいつまでもネバネバしていますが、加熱により質が変化した食用油は、熱いものにも冷めたものにも付くと1日ぐらいで乾きます。これを乾性油のシミといいます。
 油溶性のシミはドライクリーニングで取れますが、乾油性のシミは、ドライクリーニングでも取れません特殊な処理が必要です。
 シミの状態は、油溶性も乾性油も輪郭がぼやけて中は均一で、灰色または黄褐色をしています。

 水溶性のシミは、飲食物の食べこぼしなどが主なもので、シミの大部分を占めています。ジュース・コーヒー・酒類・みそ汁・スープ・果汁などです。シミの状態は、ほとんどが輪郭がハッキリしています。血液・インクなども含まれます。
 水溶性のシミは取りやすそうに思えますが、食品の中に含まれる糖や糖質(澱粉)・塩類は、アルカリや熱、経時変化(日数が経つこと、通常1週間以上)でキャラメル化し、黄色や褐色のシミになります。蛋白質が含まれたシミは、アルカリや熱により硬化します。尿も、経時変化で黄色いシミに変わります。
 これらは、水や洗剤では落とすことのできない不溶性のシミです。

 泥ジミの中の砂・ホコリ・サビ・カビ・タバコのヤニなどです。蛋白質の固着したもの、糖などの経時変化したもの。墨汁も不溶性のシミです。
 蛋白質のシミは、明るい方に透かして見ると輪郭が透き通って見えます。

 

 シミは取れたけれども、生地を傷めてしまった。
 シミは取れたけれども、色が抜けてしまった。
 シミは取れたけれども、白くなってしまった。
 シミは取れたけれども、毛羽立ってしまった。 
 シミも取れたず、衣服も傷めてしまった。
 シミ抜きは、繊維や染色、シミを見分け、適切なやり方を選んで行います。シミ抜きは、焦らず、傷口を手当するように優しい気持ちで行いましょう。

 油の混ざったシミ、油の下にあるシミは、油が防水の働きをして水や洗剤、化学薬品を通しません。シミ抜きの第一歩は、油性分を取り除くことから始まります。簡単に取る方法があります。「指抜き」です。驚くほど簡単に取れます。通常の方法では取れない、クリーニングに出しても残る、数カ月もしてから浮き出てくる厄介な乾油性のシミも取れます。
 なぜ簡単に取れるのか、理由は簡単です。経時変化や熱で硬化し、殻状になって防水の役目を果たしている表面を砕いて、洗剤原液が浸透しやすくなるからです。

 シミの部分に真っ先に水を付ける方がいますが、繊維によっては膨張し、汚れや染料が中に入り込んで取れにくくします。
 シミ抜きには、方程式があります。まずは油溶性のシミ、次に水溶性、後は酵素処理、溶解処理、化学処理、漂白処理と続きます。
 水溶性の処理の後は、シミの状態に応じて必要な処理だけをすればよいのですが、油溶性と水溶性の処理は必ず順序どおりに行います。
 シミによっては水溶性のものと断定できるものもありますが、多くはありません。判定しにくいシミを取るには、油溶性と水溶性のシミを一体として行う方が安全で確実です。

 輪ジミを残さずシミを取るには、繊維、染色、シミの知識、技術と経験が必要です。小道具も必要です。
手軽な方法として、洗濯を前提としたシミ抜きをお勧めします。シミ抜き処理の後、全体洗いをすれば輪ジミは残りません。
クリーニングの基本で紹介している「前処理」をシミ抜き法として行えば、特別な道具や化学薬品は不要です。日常の生活で付く汚れやシミのほとんどが取れます。
この「前処理」は、油溶性と水溶性のシミ抜きを一体化したもので、不溶性のシミでも一部、取り除くことができます。クリーニング屋さんでも取れなかったシミが、この「前処理」で取れることもあります。

洗濯の前処理

 シミといえば反射的に漂白剤という方がいますが、漂白剤で取れるシミはそう多くはありません。シミ抜きの順序としては、漂白剤は最終手段です。
 漂白剤の原液を使うと色が抜けたり、ムラになったりします。本来は、白いものをより白くするためのものです。染み抜き剤としては用途は限定されます。最近は色物、柄物に使えるソフト仕様のものも出ていますが、使う前に目立たないところにつけ、アイロンをかけてテストをします。繊維や染色に変化がないことを確かめてから、シミ抜きをしてください。

 シミは、付いてからの時間が問題です。2時間以内だと非常に取りやすく、2日以内だと取りやすく、1週間ではまあまあ取りやすく、それを超えると急に取れにくくなります。時々刻々、取れにくくなります。2週間を超えるとシミの質も変わり、定着してしまいます。熱やアルカリで変化したものはさらに取りにくくなります。糖はキャラメル化し、蛋白質は硬化して不溶性のシミに変化してしまいます。
 汗も、食べた物や体質で成分が異なり、短時間で変化して取りにくいシミになることがあります。
 昔から、脱いだら体温が残っているうちに洗えと言われています。

順序を入れ替えるとシミは取りにくくなります。

①油性処理
   シミによって中性洗剤の原液、酢酸アミール※1、モノクロールベンゼン※2を使い分ける。
   酢酸アミールはアセテート、トリアセテートには使えない。

②水性処理
  水のみで処理するか、水と中性洗剤またはマルセル石鹸を使う。

③酵素処理
  蛋白質分解用酵素を使って、水と温度(40~50℃)と時間をかける。
  (アイスクリーム・チョコレート・洋菓子・卵の白身・ミルク・マヨネーズ・カレー・ミートソース・肉汁・血液・
  嘔吐物・ 精液・墨汁など。)

④溶解処理
  アルコールやアルカリ、アンモニアで染料を溶出する。
  (ラッカー・ボールペン・マジック・マニキュア・インキ・染料など。)

⑤化学処理
  科学的にシミを取る方法で、シミにより使用する薬品が異なる。
  (汗・油・サビ・カビ・焼け焦げ・セメントのなど。)

⑥漂白処理
  酸化漂白または還元漂白を行う。
  酸化漂白には、過酸化水素水、オキシドールまたは市販の酸素系漂白剤を使う。
  (紅茶・コーヒー・草の汁・汁粉・前財・スープ・マジックなど)
  ただし、次のものは過硼化ソーダー※3で酸化漂白を行うと効果的。
  (コカコーラ・サイダー・香水・インキ青・血液・排泄物など。)
  還元漂白にはハイドロサルファイト※4を使う。
  (ジュース・ラー油など。)
  塩素漂白は衣服用にはあまり使わない。

※1酢酸アミール・・・樹脂・接着剤・鉱物油・塗料・マニキュア・化学糊の硬化したものに有効。
※2モノクロールベンゼン・・・各繊維に安全な油溶性シミ抜きの基本溶剤。界面活性剤と混ぜて使う。
※3過硼化ソーダー・・・過酸化水素を原料に作られる。酸化黄変したシミに効果的。
※4ハイドロサルファイト・・・マルセル石鹸と併用し、高温での煮洗いで塩基性染料以外は脱色できる。人工藍色インジコには使えない。
 

 溢れるようにあるシミ染み抜き剤の中から適切なものを選ぶのは難しく、使ってもあまりうまくとれない場合が多いようです。クリーニング店に頼んでもきれいに取れなかったという相談も結構あります。
 自宅でクリーニング本舗ではシミ抜きを特別なものと考えず、洗濯前の習慣として行うことをお勧めしています。
 自宅でクリーニング本舗で紹介している「前処理」は、ほとんどのシミを取ることができますが、万一取れrなくても繊維への負担が少なくてすみます。
 一部のサビやカビ、墨汁には化学処理を要しますが、最も多い薄い黄褐色のシミが残った時は、消毒用オキシドール※5を薄めた液を使えばほとんどが取れます。
 シミ抜きで大切なことは、生地を傷めないこと、次に打つ手の可能性を残しておくことです。

◆オキシドールの使い方
①デリケートな生地には、水で7倍以上に薄める。
②色物、柄物にはテストをする。目立たないところにつけ、アイロンをかけて変色しないことを確かめる。
③オキシドールは竹串か楊枝の先に付け、シミの真ん中に移す。これを繰り返してシミ全体に広げる。
④一度で取れないときは、2~3度繰り返す。
⑤水でよくすすいでから陰干しする。

※5消毒用オキシドール・・・過酸化水素を10倍希釈したもの。

※1~5はすべて薬局で入手できますが、記名捺印の必要なものもあります。

 気を使っていてもシミは付きます。着用のたびに汚れやシミが付くのは防ぎようがありません。
 お勧めしたいのは、予め汚れやシミが付きにくい加工をしておくことです。加工と言っても、たいそうなことではありません。「風合い回復仕上げ」をしておきます。風合回復剤ドライの素Dと活性仕上剤ドライの素Eが繊維の一本一本を程よくコーティング、汚れやシミを付きにくくします。付いた汚れやシミも落としやすくなります。

ドライの素Dドライの素E

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